働きアリの流儀

日本、タイ、米国の企業で働く3人組が日々の気づきを綴っています

日本人が英語と上手く付き合うには

こんにちは。

今日は「日本人が英語と上手く付き合うには」をテーマに話していきたいと思います。

始めに

「日本人は英語が話せない」とよく言われていますが、それは残念ながら本当のようです。2020年11月にEF EPIレポート(英語能力調査)の2020年版が発表されましたが、英語を母国語としない112か国および地域中、日本は先進国にも関わらず78位(アジアでは24か国中13位)となっています。

www.efjapan.co.jp

さまざまな専門家や英語講師たちが、なぜ日本人は英語を話せないのかについて様々な理由を挙げており、「英語を話す機会がない」、「文法中心の英語学習をしている」、「間違えることを恐れている」などと考察しています。これらも確かにそうなのですが、理由は他にもあるように思います。

現在、私は米国の企業で働いており、日々の仕事の中で日本人が話す英語、ネイティブの米国人が話す英語、そして日本人以外の非ネイティブが話す英語を耳にする機会があります。その中で、私が感じた「日本人が英語を話せない理由」について、今回は2つ紹介していきます。

1.英語をネイティブスピーカーの言葉だと思っている

Lingua franca(リンガ・フランカ)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?この言葉は、イタリア語の「フランク国の言語」に由来しており、「異なる母語を話す二者が共通語として使う言語」という意味に転じて使われています。その点で、英語は国際共通語としてEnglish as Lingua fanca(リンガ・フランカとしての英語)と呼ばれることもあります。 

www.thoughtco.com

このEnglish as Lingua fanca(リンガ・フランカとしての英語)という観点からすると、英語は米国人のようなネイティブスピーカーだけのものではなく、世界中の人たちが意思疎通をするための共通のツールであり、誰の母語でもないということになります。

実際、英語を話す世界人口はネイティブと非ネイティブ含めて約11億2100万人いると言われていますが、その内訳は以下の通りです。

  • ネイティブスピーカー(英語を第一言語とする人):3億7800万人
  • ノンネイティブスピーカー(英語を第二言語とする人):7億4300万人

つまり、英語を話す人の約3分の2が非ネイティブということになります。さらに、世界で起きているすべての会話を聞いてみると、ネイティブスピーカー同士の会話は全体の4%に過ぎないというデータや、インターネット上のコンテンツの54パーセント近くは英語で書かれているという調査もあります。

lemongrad.com

多くの日本人はこの事実を見過ごし、英語は他国の言語というような線引きをして距離を置いてしまっているように感じます。英語はLingua franca(リンガ・フランカ)であり、日本人にも平等に所有権の与えられたツールという認識をもつことができれば、より躊躇や遠慮を感じることなく英語に対して向き合うことができるのではないかと思います。

ちなみに、私も非ネイティブのインド人と英語で会話する機会があるのですが、彼らは決して英語をネイティブたちの言葉とは思っていません。インド人はかなり癖のある訛った英語を話すことで知られていますが、彼らからすると「なんで俺の英語が聞き取れないんだ?」という感覚もっているようです。なかなか図太い神経をしているなと思うこともあるのですが、それが世界のスタンダードなのかもしれません。

2.コンテクストや相手の理解力に依存しすぎている

ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化という考え方をご存じでしょうか?ハイコンテクスト文化とは、コミュニケーションがコンテクスト(文脈や背景)に大きく依存する文化のことで、この文化圏のコミュニケーションには、顔の表情、声の調子、その場の状況など言葉以外の要素にも考慮するという意味で多くの曖昧さが存在します。日本はこのハイコンテクスト文化であり、日本語はその代表例と言えます。

www.unitedlanguagegroup.com

一方でローコンテクスト文化は、コンテクスト(文脈や背景)に依存しない文化で、この文化圏では、コミュニケーションがほぼ言語のみを通じて行われるため、より明快さ端的さが求められます。北米や欧州の地域の多くはローコンテクスト文化であり、英語はその筆頭です。

このハイコンテクストとローコンテクストの違いの本質を理解していないことが、日本人が英語でのコミュニケーションを苦手とするもう1つの理由のように感じます。ここで1つの具体例を挙げてみます。例えば、電話を相手に取り次いでもらいたいとき、日本語では「〇〇さんはいらっしゃいますか?」という表現が一般的です。これを英語に直訳すると “Is Mr./Ms. 〇〇 there?”という表現になりますが、これだと相手に〇〇さんがその場にいるかどうかだけを尋ねていることになり、その人に電話を取り次いでほしいという意味にはなりません。(もちろん実際は何となくは分かってもらえますが)

これがハイコンテクスト独特の表現であり、ローコンテクスト文化では「〇〇さんと話したいので、電話を替わってくれませんか?」というように伝える必要があり、英語では、”May I speak to Mr./Ms. 〇〇?”という表現になります。

一を聞いて十を知ってくれる高度にコンテクストに依存した社会で暮らす日本人にとって、全てを言葉で説明しなければいけないローコンテクスト文化でのコミュニケーションは、かなり面倒でストレスのように感じるのだと思います。しかし、相手の理解力に委ねるのではなく、自分が伝える努力をするというのが英語でのコミュニケーションにとって大切のように感じます。

まとめ

最後に、これは余談になるのですが、日本語が優れた言語ゆえに日本人はこれまで何かを学ぶ上で英語に頼る必要がなかったという見方もあります。フィリピン人の場合は対照的で、タガログ語を標準化したフィリピン語には学問的な語彙が不足しており、高度な学問を学ぼうとすると英語などの他言語で学ぶしかありません。例えば、タガログ語には「光合成」という言葉は存在せず、英語の “photosynthesis”という単語を使うしかないそうです。

「日本人が英語を話せない理由」について、今回は少し違った側面から紹介してみましたがいかがだったか?英語に苦手意識を感じている人のお役に少しでも立てたならば何よりです。