働きアリの流儀

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リスキリング:学ぶ力を高める

皆さんこんにちは。今日は「学ぶ力」の重要性について考えていきたいと思います。ここ数年、ニュースで良く耳にする「リスキリング」という言葉をご存じでしょうか?

リスキリングとは?

「従業員が新しい職業に就いたり、今の職業で必要とされるスキルの大きな変化に適応するために必要な能力やスキルを、仕事を続けながら継続的にアップデートしていくこと」というのが一般的なリスキリングの定義ですが、よく似た言葉にリカレント教育やアップスキリング、そしてアウトスキリングという言葉もあります。

リスキリングに似た言葉

  • リカレント教育:キャリアを一時中断して大学等の教育機関に入り直して学ぶ
  • アップスキリング(Upskilling):今の職業に関連するスキルを高めること
  • アウトスキリング(Outskilling):人員整理対象となる従業員に対して、解雇前にリスキリングの機会を提供し、成長産業への転職を支援すること

抽象的な言葉なので、少し具体例を用いながら説明したいと思います。リスキリングとは、例えばスーパーやコンビニ、またアパレルなどの店舗スタッフの人が、これまでの接客や棚卸などの店舗での業務ではなく、Eコマース(オンラインでの販売)に必要なウェブサイトの運営やマーケティングなどのスキルを身に着けて、リモートの顧客サービス担当者として業務を継続しながら再教育の機会を受けることです。

これは、業務を継続しながらというのが、キャリアを一時中断して学びの機会を得るリカレント教育とは異なる点です。一方、アップスキリングとは、先ほどの事例で説明すると、既にEコマースを展開しているお店のマネージャーが、さらにデジタルでのマーケティング力を強化するために、データ分析などより高度なスキルを身に着けてもらうことです。

最後に、アウトスキリングは解雇や転職がより一般的な欧米諸国で進んでいる動きで、従業員を解雇になる前に、次の仕事で必要なスキルや能力を身に着けてもらうための学びの機会を提供して仕事探しを視点するというものです。

なぜリスキリングが重要なのか?

では、なぜリスキリングが注目されているのでしょうか?その背景にあるのは自動化や機械化による人間が従事する仕事の内容の変化と、スキルのコモディティ化が加速しているという2つの理由が大きく考えられます。

1. 自動化や機械化による人間の仕事の変化

世界経済フォーラムが2020年に発表したデータによると、2025年までに、データサイエンティストのような機械やアルゴリズムとの協働が求められる新しい仕事が約9,700万創出される一方で、データ入力や事務作業のような単純作業である8,500万の仕事(例:会計士、監査役カスタマーサービス)が機械などに代替されるという衝撃的な予測を出しています。

ここから読み取れるのは、無くなる仕事の数と新しく生まれる仕事の数を単純に比較した場合には、人間の仕事は機械やAIによって奪われるという分けではないということです。それよりも重要なのは、人間が持っているスキルと求められる仕事のミスマッチが起きているということで、IoTやビッグデータ、AIの活用で省力化が進む影響で仕事を失う人が増える一方で、仕事のデジタル化・自動化に対応できる高度な技術を持った人材は不足しているという現象です。つまり、いかに新しく生まれる仕事に求められるスキルを身に着けて世の中の動きについていけるかが大切であるということです。

また、2025年までに現在の労働者のコアスキルの40%が変化し、全世界の労働者の半数が、2025年までにリスキリング(Reskilling)を必要とするというデータもあります。みなさんは、4年後に自分のしている業務の内容が大きく変わっていることを想像できるでしょうか?4年前を振り返ると想像できないかもしれませんが、それだけ世の中の変化のスピードが速くなっていることを物語っています。

2. スキルのコモディティ化の加速

スキルのコモディティ化とは、これまではその人の武器になる価値の高いスキルと認識されていたものが、次第に他の人のスキルと大差がなくなってしまうことで、日本語では「一般化」と言われることも多いです。例を挙げると、これまでは英語を話せるだけで重宝されていた人も、英語教育の義務化や強化によって、誰でもある程度の英語が話せるようになり、差別化できなくなるというようなものです。さらに、大学院でMBAを取ることも海外では当たり前になっており、ハーバード大やMITのような超一流の大学のMBAを取得しない限りは、そうした学位も価値を持たなくなってきているということです。

そして、現代ではスキルがコモディティ化(一般化)するスピードが早くなってきているのです。組織論の専門家であるJohn Seely Brown氏は、「習得したスキルの半減期は5年である。つまり、10年前に習得したことの多くは陳腐化し、5年前に習得したことの半分は無意味になる。」と述べており、どれだけ次の時代にあった新しいスキルをいかに継続的に身に着けるかが重要になると指摘しています。

実際、未来学者のAlvin Tofflerも「21世紀において、無教養な人とは読み書きができない人のことではなく、学ぶこと(learning)、学習棄却(unlearning)、学び直し(relearning)ができない人のことを指すようになるあろう。」と述べており、これまで学んできたことに拘泥することなく、勇気をもってその学びを一旦忘れて学び直すことができるかが重要であると説明しています。

まとめ

今回はリスキリングの重要性について説明をしてきましたが、いかがだったでしょうか?これまでは、何を学ぶかといった学ぶ内容に重きが置かれていましたが、これからの時代はどう効率的に学ぶか、そしてどれだけ継続的に学びを続けられるかといった、学ぶ力や学ぶことへの好奇心が大切になってくると言えると思います。

こうした学ぶ力は短期間で身に着くものではないので、普段の生活から気になったことは積極的に調べて好奇心をもつようにしたり、現状をいかに維持するかではなく、どう変えていくかを考えるような習慣をもつことで、継続的に学ぶ力は身についてくるのではないかと思います。

 

つねなり